著作権法改正における写り込みの具体的事例

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著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)の
弁護士・診断士の柿沼太一です。

今日はいわゆる「写り込み」の具体例について書きます。

前回は適法な「写り込み」の創作・利用の要件について説明しました。

まず,適法に創作する際には

  • ① 分離困難
  • ② 軽微性
  • ③ 著作権者の利益を不当に害しない

が必要です(1項)。

ただし,一旦この要件を満たして創作された著作物+付随著作物については
③ 著作権者の利益を不当に害しない
の要件さえ満たせば利用できます(2項)

1 適法な「写り込み」の創作・利用の具体例
① 分離困難
② 軽微性
③ 著作権者の利益を不当に害しない
と言っても,もう少し具体的なケースがわか
らないと,OKかどうかの線引きが出来ませんよね。

文化庁のWEBサイト(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/utsurikomi.html
において適法な創作行為や利用行為として例示されているのは

○ 写真を撮影したところ,本来意図した撮影対象だけでなく,
背景に小さくポスターや絵画が写り込む場合

○ 街角の風景をビデオ収録したところ,本来意図した収録対象だけでなく,
ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合

○ 絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載する場合

○ ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像を,
放送やインターネット送信する場合

というケースです。

逆にアウトとされているのが

○ 本来の撮影対象として,ポスターや絵画を撮影した写真を,
ブログに掲載する場合

○ テレビドラマのセットとして,重要なシーンで視聴者に積極的に
見せる意図をもって絵画を設置し,これをビデオ収録した映像を,放送や
インターネット送信する場合

○ 漫画のキャラクターの顧客吸引力を利用する態様で写真の本来の
撮影対象に付随して漫画のキャラクターが写り込んでいる写真を
ステッカー等として販売する場合
です。

これらの例を見ればわかるように
① 「分離困難性」として
 撮影意図との関係で,本来の撮影対象としていたものか否か
② 「軽微性」として
 「写り込み」の対象の映像等に占める割合が物理的に小さいものかどうか
③ 「著作権者の利益を不当に害しない」として,
 著作権者の著作物の利用市場とバッティングしたりあるいは将来における
著作物の潜在的販路を阻害するか
がかなり重視されるのではないかと思われます。

言い換えれば,
①は「たまたま」とか「意図しない」という主観面,
②は「小さいかどうか」という客観面
と言ってもいいかもしれません。
③については,平たく言えば,本来の著作権者のパイを奪っていないか,
と言うことですね。

もう少し具体的に考えてみましょう。

たとえば,TVドラマの撮影において,偶然「録り込んだ」音楽が
登場人物の心情にシンクロして,その映像の雰囲気の重要な構成要素
となっている場合です。

青春ドラマにおいて,川の土手で主人公が初めて告白するシーンを撮影
していた際に,その近くでデビュー前のバンドが練習していた,
練習中の音楽がたまたま録り込まれたが,その音楽が主人公の内心に
非常に良くマッチしていた。

TV局は,撮影・編集当時は「録り込み」を意識していなかったが,
放送後,ネットを中心にじわじわとその場面における「録り込み」
BGMが話題になり,
「あの曲を演奏しているバンドは誰だ?」「私たちです」ということに
なってメジャーデビューした,と(想像力が貧弱で申し訳ない)。

そのあと,当該TVドラマをDVD化する際に,その「録り込み」
は著作権侵害になるか,という問題です。

まず,撮影・編集時には,当該楽曲の「録り込み」は本来の撮影意図
とは全く無関係ですし,川の土手で偶然「録り込み」された楽曲ですから,
それほどボリュームも大きくないし,楽曲の一部分に過ぎないでしょう。

ということで1項の,「① 分離困難性,② 軽微性,③ 著作権者の利益を不当に
害しない」は満たしていると思われます。

次にDVD化する際には,既に1項で適法に創作されていますので,
TV局としては楽曲を分離する義務はありません。問題はDVD化に
よって「③ 著作権者の利益を不当に害しない」かどうか,です。

そのDVDを見た人が「あ,これがネットで話題になっていた,
あのバンドのメジャーデビュー前の曲か,買ってみよ。」とは思う
でしょうが,「このDVDでこの曲はどんな曲かわかったらかもう
買わなくていいや」「今度この曲を聴きたいときは,このDVDをもう
一度見ればいいもんね」とは,まず思わないですよね。

したがって「著作権者の著作物の利用市場とバッティングしたり,
あるいは将来における著作物の潜在的販路を阻害する」とも言えないと思われます。

結論的には,このケースでは,創作及びその後のDVD化などの
利用,いずれも問題ない,ということになると思われます。

今日はここまで。

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著作権法改正における写り込みのOKとNG

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著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

今日はいわゆる「写り込み」について著作権法改正と絡めて書きます。

1 「写り込み」とは

映像を撮影する際に,意図しないものが映像内に写り込んで
しまうことがあります。

このような場合,映り込んだものが,アニメのキャラクター
などの著作物である場合,形式的には著作権侵害が問題となります。

また,目に見える著作物が映像内に「写り込み」してしまう
だけでなく,撮影現場で流れている音楽が意図せずに映像内に
「録り込み」(こんな日本語初めて聞いたのですが,後述の文化庁の
HPには記載されています)してしまう場合もあります。

音楽は通常著作物ですので,同じようなことが問題になるわけです。

もちろん,常識的に考えて「写り込み」=著作権侵害とするのが
妥当で無いことは明らかですので,「「写り込み」が著作権侵害では無い」
とする結論を導くために,いろいろな考え方が提唱されてきました。

2 平成24年著作権法改正
ここでは,それらを逐一紹介することはしませんが,平成24年に
改正された著作権法においては,一定要件を満たせば「写り込み」
は著作権侵害ではない,と規定しています。

まず,条文の紹介から。

第30条の2 写真の撮影,録音又は録画(以下この項において「写真の
撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作するに当たつて,
当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る
写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難で
あるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等
著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において
「付随対象著作物」という。)は,当該創作に伴つて複製又は翻案する
ことができる。ただし,当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の
態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限り
でない。

2 前項の規定により複製又は翻案された付随対象著作物は,同項に規定
する写真等著作物の利用に伴つて利用することができる。ただし,
当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の
利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。

ご多分に漏れず長い条文ですが,著作権法の条文としては比較的わかりやすい
条文ですかね。

要するに,写真撮影,録音,映像録画をする際に,その過程において
写り込んでしまった著作物(「付随対象著作物」といいます)についても,
一定の要件を満たせば,そのまま録音録画できるということ(第1項)と,
そのようにして作成された著作物については,一定要件を満たせばそのまま
利用できる(第2項),ということです。

注意して頂きたいのは,条文が,① 著作物を創作する際の問題(1項)と,
② 利用する際の問題(2項)に分かれているということです。

つまり,
① 適法に創作するための要件と,
② 適法に創作された著作物について利用する(複製,上映,演奏,
公衆送信,譲渡など)ための要件
が,それぞれ別に定められているのです。

3 「写り込み」がある場合に適法に創作・利用するための要件について
まず,適法に創作する際には

  • ① 分離困難
  • ② 軽微性
  • ③ 著作権者の利益を不当に害しない

が必要です(1項)。

ただし,一旦この要件を満たして創作された著作物+付随著作物については
③ 著作権者の利益を不当に害しない
の要件さえ満たせば利用できます(2項)。

このように創作と利用についてそれぞれ要件が定められているのは
どのような意味を持つのでしょうか。

まず,録音録画する際に,付随著作物が写り込んだとしても,それをその後
放送等する場合には,技術的には画像・音声処理をして,付随著作物
を分離することが出来ると思われます。

しかし,2項においては「分離困難性」が要件とされていませんので,
1項に基づいて適法に創作されてさえいれば,放送等に際しては,
そのように付随対象著作物を分離する必要は無い,ということになります。

また,もともと偶然写り込んでしまった映像について,そのあと商売っ気
が生じてそれをメインにしたプロマイドなどを販売する行為は,
1項違反にはならないが,2項違反にはなる,ということを意味します。

1項の要件を満たす付随著作物,つまり物理的に軽微性な付随著作物が,その後,
商売材料になる,ということはあまり考えられないような気もしますが,
一応条文の構造としてはそうなっています。

次回はその具体例について考えてみましょう。
今日はここまで。

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プロのための著作権研究所について

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著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

今日の記事は,そもそも,この「プロのための著作権研究所」
って何?という点についてのものです。

1 「プロのための著作権研究所」について

私の専門分野の1つとして著作権分野があります。

東京時代にご一緒させていただいたパートナー弁護士から,
弁護士になりたての頃に誘っていただいて以来,一貫して
取り組んできた分野です。

著作権についてはそれまで全く興味も関心も無かったのですが,
東京時代には,そのパートナー弁護士と組んで,非常に著名な
訴訟事件を一緒に担当させて頂きました。

その際に,知財事件ならではの理屈勝負であることや,
著作権が世の中に非常に大きな影響を与えていることを知ったこと
から,「著作権」というものに俄然興味がわき始めました。

そして,神戸に移籍してきてからも,偶然ではありますが,
ある映像制作会社と一緒にお仕事をさせて頂くことが増えました。

その制作会社は,それほど大規模ではありませんが,高品質な
映像が業界内で非常に高く評価されている会社で,それだけに
作品の無断利用などの問題が発生していました。

その会社から依頼を頂き,著作権がらみの契約書の作成や,
作品の無断使用に対する交渉,訴訟等著作権関係の予防法務や
紛争処理を経験してきました。

さらにその映像制作会社から紹介を受け,著名なアーティスト
からも仕事の依頼を受けるようになりました。

制作している作品の規模や金額がかなり大きいアーティストです
ので,すべての案件について契約書を作成しています。作品制作
に関する契約書なので,当然のことながら,契約書には著作権が
絡んできますし,アーティストが新しい試みを行うことも多い
ことから,契約書の内容のバリエーションも極めて豊富です。

このように著作権関係の予防法務や紛争処理については,
ある程度の経験を積んできたのではないかと自負しています。

さて,この「プロのための著作権研究所」を開設しようと
思ったきっかけは,ある1つの著作権関係事件でした。

事件の詳細は割愛しますが,その依頼者の方は,「著作権を
使って仕事をしているプロ」でした。

その仕事の過程で著作権がらみのトラブルが発生し,私の所に来る
まで,大阪や神戸の弁護士さんに色々法律相談をしたそうです。

しかし,著作権が関連する事件だというだけで,それらの弁護士
さんからはいずれも「自分は著作権はわからないから」と言われて
満足な回答を得られなかった,ということで,私の事務所のホーム
ページを見られて,相談にいらっしゃいました。

相談内容を詳しくお聞きしたところ,著作権問題といっても
典型的なパターンの紛争でした。

著作権法の内容や,本件の問題点,その見通しなどについて
説明をした結果,幸いなことに「本当によくわかりました,
ありがとうございます。」とおっしゃって非常に満足して帰って
頂きました。

その依頼者から,「著作権はわからない」という理由で複数の
弁護士をたらい回しにされたということを聞き(それはそれで
弁護士としては誠実な態度なのですが),実は,著作権に関する
相談,特に「著作権を使って仕事をしているプロ」からの,
著作権関係の相談に積極的に応じている弁護士はかなり少ない
のではないか,ということに気づいたのです。

自分としては,これまで当たり前のようにやってきたことが,
実は世の中で必要とされていることに気づいた,と言ってもいい
かもしれません。

相談が終わった後,ネットで「著作権 相談」というキーワード
で検索してみました。

すると,一般の方向けの著作権解説サイトは数多くあれど,
「著作権を使って仕事をしているプロ」向けのサイトは,まだ無い
ことがわかりました(私が見つけ切れていないだけかもしれませんが)。

著作権を使って仕事をしている人こそ,そのようなサイトを
欲しているはずなのに,それが無いのはおかしい,自分のこれまでの
経験や著作権に関する専門知識を生かし,「著作権を使って仕事を
しているプロ」の役に立ちたい,という思いで,この「プロのための
著作権研究所」を開設しました。

2 「プロのための著作権研究所」の想定している読者層と,
今後の記事内容について
このブログが想定している読者層は,「著作権を使って
仕事をしているプロ」です。

具体的には,

  • コンテンツ制作会社(TV番組制作,WEBコンテンツ制作,映像制作、音楽制作,広告制作など)
  • コンテンツ流通・配信会社
  • 個人のクリエイター(デザイナー,WEBデザイナー,ゲームクリエイター),
  • アーティスト

です。

また,今後の記事内容については,

  • プロが実際に著作権を使って仕事をしていくにあたって悩むだろう問題点
  • 私が実際の案件において相談を受けた内容
  • 著作権に関する時事ネタ
  • 著作権法改正

などを中心にします。

したがって,著作権の初歩的な分野は解説を省略することも
ありますが,ご容赦ください。

それでは,よろしくお願いします!

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