著作権侵害の事例:参考資料のコピーは侵害なの?


著作権侵害の事例:参考資料のコピーは侵害なの?著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ「プロのための著作権研究所」
所長(所員なし,募集中)の弁護士・診断士の柿沼太一です。

今日は,著作権絡みでセミナーを行うと,必ずと言っていいほど質問される

・ 企画書を作るために社内で資料をコピーしてても著作権侵害になるのでしょうか
・ 社内の勉強会向けに資料をコピーしては駄目でしょうか

について書きます。

著作者の許諾がなければ,そのような行為は著作権のうちの複製権を侵害する行為ですから著作権侵害ということになってしまいます。

ですので,そのような場合は「残念ながらそうなってしまいますね。」
と答えざるを得ませんでした。
そうすると,質問した方は「これだから法律(家)って奴は・・・
(常識が無いなあ)」と,顔で物語りながら不承不承納得されます。

ただし,そのように形式的な解釈をすると,たとえば,当該著作物を
使ったイベントの企画書を作成する場合なども著作権侵害となってしまいます。

そうなると,著作者にとってはせっかくの著作物の利用・展開の機会
を逃すことになりますから,著作者にとっても不利益となる可能性があります。

そこで,平成24年改正においては,このような著作権利用の検討過程
における利用については,一定要件の下で許されることになりました。

まずは条文から。

  • (検討の過程における利用)
  • 第30条の3 著作権者の許諾を得て,又は第67条第1項,第68条第1項若しくは第69条の規定による裁定を受けて著作物を利用しようとする者は,これらの利用についての検討の過程(当該許諾を得,又は当該裁定を受ける過程を含む。)における利用に供することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,当該著作物を利用することができる。ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。

これも,著作権法の条文としては,まあわかりやすい部類ですね。

要するに,著作権者の許諾等を得て著作物を利用しようとする者は,
要件を満たしさえすれば必要な範囲で利用できる,ということです。

もう少し詳しく見てみましょう。

  • ① 著作権者の許諾等を得て著作物を利用しようとする者であること
  • ② 利用についての検討の過程(当該許諾を得,又は当該裁定を受ける過程を含む。)における利用に供することを目的としていること
  • ③ 必要と認められる限度であること。
  • ④ 当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害していないこと

という4つの要件があることになります。

① 著作権者の許諾等を得て著作物を利用しようとする者であること」の要件
については「利用しようとする」者であれば足りますから,企画して著作物の
利用行為(企画書の作成,試作品の作成など)はしたけど,実際には社内でボツ
になり,著作者に許諾を求めるところまで行かなかったとしても,OKということになります。

次に「② 利用についての検討の過程(当該許諾を得,又は当該裁定を受ける
過程を含む。)における利用に供することを目的としていること」の要件は少し
わかりにくいですね。

ある著作物を利用した企画を立てる場合,その過程は「内部的な検討過程」
と「著作者の許諾を得る過程」の2つで構成されます。

「内部的な検討過程」は,社内的な企画会議,ブレーンストーミングなどです。
その過程を経て「これは行けそう」ということになれば,著作者の許諾を得るために,
著作者向けの提案資料・プレゼン資料の作成に入ることになります。
これが「著作者の許諾を得る過程」です。

上記の括弧書きの「(当該許諾を得,又は当該裁定を受ける過程を含む。)」
というのは,この「著作者の許諾を得る過程」についても本条は適用されますよ
ということを意味しています(文化庁の該当webページ

「③ 必要と認められる限度であること」の要件は簡単ですね。
「検討過程における利用」に必要な範囲でしか利用は認められませんから,
たとえば,企画書や試作品がいくら上手く出来たからと言って,それを販売したり,
ノベルティグッズとして配布しては駄目,ということになります。

ちなみに,先ほど紹介した文化庁の該当ページ
において,アウトとされているのは以下のような行為です。

○ 企業内において,業務の参考とするために新聞や書籍,雑誌等の著作物を複製
する場合
○ あるキャラクターの利用に係る検討を行う過程で,当該キャラクターを利用した
試作品を,社外の者に幅広く頒布する場合

ですから,冒頭の質問
・ 企画書を作るために社内で資料をコピーしても著作権侵害になるのでしょうか
・ 社内の勉強会向けに資料をコピーしては駄目でしょうか
に戻ると
前者はOKの場合があるけど,後者はダメです,という答えになりますね。

今日はここまで。

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