著作権侵害?写真のトレース


著作権侵害?写真のトレース著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

まずは本題よりも好評を頂いている料理写真です。

IMG_3760

 

・ 大根とツナのマヨネーズサラダ
・ カボチャのマッシュ
・ もやしとエリンギの蒸し物
・ ニラ玉
・ ブリの照り焼き
です。

カボチャのマッシュには,干しぶどうと無塩のナッツを砕いたもの
をたっぷり入れます。そうすると,マヨネーズを入れなくても美味しい!

ニラ玉は,通常溶き卵で作ると思いますが,このときは溶かずに
そのまま落としてみました。結論は・・やっぱりオーソドックスが一番。

さて,今日は,最近ネットで話題になっている「昆虫交尾図鑑」という書籍を
ネタに,写真のトレースについて考えてみたいと思います。

1 「昆虫交尾図鑑」について
「昆虫交尾図鑑」をご存じでしょうか。昨年の12月に出版された本です。

アマゾンの「内容紹介」を引用しますと,

(引用開始)
命を紡ぐ姿は、美しくて……バカっぽい。
時に美しく、時に狂気、時に滑稽で、時に哀しい。現役美大生が描く、
そんな虫たちの愛の営み25態。
(引用終了)

というもの。

昆虫の交尾時の様子を,写実的なイラストで表現した書籍です。

2 何が問題なのか
この本,ご存じの方も多いと思いますが,ネット上の写真を
トレース(模写)しただけの内容ではないか,と言うことで,
ネット上で大変な炎上騒ぎになりました。

書籍の元ネタとなったのではないかと言われている写真と,
書籍内のイラストを対比してみるとこんな感じです。

http://matome.naver.jp/odai/2138642307212674001?&page=1

確かによく似ていますね。

3 ポイントは「元ネタとなった写真の創作性の高さ」
まず,どうも「昆虫交尾図鑑」の著者の方が,ネット上の
写真をもとにしてイラストを作成したことは間違いない事実の
ようです。

この件で,著作権侵害となるかどうかのポイントは,まず元ネタとなった
写真の創作性の高さです。

もちろん,著作権法上,「写真」は著作物の一種とされています。
これは、被写体の選択やアングル等に個性が表れるためです。

もっとも,写真は絵画などと違って,撮影対象を機械的に忠実に
複製するものですから,その創作性にはかなりのばらつきがあります。

一番創作性が低いのは,証明用写真などですね。
このような写真の場合,創作性が低いのでそもとも著作物とすら
言えません。

逆に,著名写真家が撮影した芸術的・独創的な写真などは,
言うまでも無く高い創作性を持っているということになります。
たとえば,ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」などです
(撮影者が本当は誰かという点については,最近諸説あるようですが)。

4 元ネタ写真の「創作性」は著作権侵害の判断にどのように
関わってくるのか

過去の判例をみると、ある写真の創作性の程度が低い場合は、
著作権侵害となるのは当該写真をそのままコピーして利用した
ような場合にほぼ限定される、とした知財高裁の判決
(平成18年3月29日)があります。

この考え方に基づくと、逆に創作性の程度が高い写真なら、
『類似』(侵害)とみなされるものの範囲は広くなることになります。

つまりこういう図式です。

▼「元ネタの創作性が低い」=保護範囲が狭い=デッドコピー
でない限り,かなり似ていても「複製」ではない。

▼「元ネタの創作性が高い」=保護範囲が広い=デッドコピー
はもちろん,かなり広い範囲で「複製」となる。

キャプチャ003

*(クリックすると拡大します)
青い円が元ネタの創作性の高低を示しています。創作性が低け
れば狭い保護範囲,高ければ広い保護範囲,というイメージです。
そして,小さい円が,元ネタをもとに制作したものを示しています。

デッドコピーの場合(赤い円)は,狭い保護範囲内に入る
ので,元ネタの創作性が低くても「複製」に該当します。

逆に,かなり似ていてもデッドコピーでは無い場合
(黄色い円),狭い保護範囲には入らないが広い範囲に入るので,
元ネタの創作性が低ければ「複製」に該当せず,高ければ「複製」
に該当する,ということになります。

ちなみにここでいう「デッドコピー」とは「そのまんまコピー」
という意味です。トレースもこの「デッドコピー」の一種ですね。

5 結論
「昆虫交尾図鑑」に話を戻しますと,先ほど引用した写真やイラスト
からおわかりのように,元ネタ写真の創作性の程度は、その写真
ごとに様々です。

元ネタ写真の中には、この昆虫の交尾の様子を撮影しようと
思えば、誰が撮影しようとこのような写真になるだろう、という
写真(つまり,創作性が低い写真)もある一方で、一つの美的作品
と評価しうるような写真(創作性が高い写真)まであるように思います。

したがって,先ほど述べたように,元ネタ写真の保護範囲は狭い
ものから広いものまで様々,ということになります。

ただ、今回問題となっているイラストを、元ネタに
なったとされる写真と比較してみると、イラストは写真のほぼ
デッドコピーと言えそうです(先ほどの図表の赤い円部分)。

したがって、結論としては、元ネタとなった写真の
創作性の程度にかかわらず、これらのイラストは著作権侵害
の可能性が高い、ということになるでしょう。

今日はここまで。

<今日のまとめ>

  • ある写真をもとに複製物を作成した場合に,著作権侵害になるかどうかは,元ネタ写真の創作性の高低による。
  • 「元ネタの創作性が低い」=保護範囲が狭い=デッドコピーでない限り,かなり似ていても「複製」ではない。
  • 「元ネタの創作性が高い」=保護範囲が広い=デッドコピーはもちろん,かなり広い範囲で「複製」となる。

ブログで書けないネタも書くかもしれない?
メルマガ登録はこちらからどうぞ。

カテゴリー: 著作権一般 タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です