肖像権の侵害?店舗内での取材・撮影

[`evernote` not found]
GREE にシェア
LINEで送る

肖像権の侵害?店舗内での取材・撮影著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)の弁護士・診断士の柿沼太一です。

まずは本題よりも好評を頂いている料理写真です。

IMG_3633

今日のメニューは
・ ネギと豚バラの角煮
・ ネギ餅
・ 2種類のナムル(ニンジンとほうれん草)
・ 秋刀魚の酢じめ
です。

ネギと豚バラの角煮は,半分に切った長ネギと豚バラを醤油,酒,水だけで3時間くらい煮込んだものです。時間がかかりますが,放っておけばできるので便利。お肉が美味しいのはもちろんなのですが,豚バラのうまみを吸い込んだネギがとても美味しいです。

ネギ餅は,強力粉をお湯でこねて平たく伸ばし,ごま油,塩,ネギのみじん切りを散らしてクルクルッと巻く,棒状になったものを,ペロペロキャンディーみたいに丸めて上からぎゅーっと押さえて平たくし,表裏を油でこんがり焼く,というものです。字だけだとわかりにくいですね。発酵の手間がいらないので,簡単で美味しいです。

さて,今日は顧問先から相談を受けた内容について(もちろんアレンジしてあります)書きたいと思います。著作権とは直接の関係がないのですが,映像や写真撮影に際しては問題となることが多いと思われる内容なので。

問い:
取材において,許可を得た上で小売店舗にカメラが入って撮影することがあるのですが,その店舗で買い物をしているお客さんの顔などが映像内に映り込んでしまうことがあります。その場合,それらのお客さん全てから書面による許可を貰わなければならないのでしょうか。

答え:
1 「肖像権」
 これは「肖像権」の問題であり「著作権」の問題ではありません。

肖像権とは「個人の私生活上の自由として、みだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されないという人格的利益」のことを言います。

肖像権を正面から認める明文規定はないのですが,最高裁判例(最高裁判決昭和44年12月24日)によって認められている権利であり,一般の人も保有する権利です。

なお,一般の人ではなく,タレントや芸能人などの場合は,肖像権に加えてパブリシティ権が問題になることもありますが,ここではその点については述べません。

このように,一般の人でも「肖像権」という権利を持っていて,それを侵害した場合には損害賠償請求される可能性がある,と。
これを押さえてください。

2 特定が出来ない場合には問題なし
まず,視聴者から見て,映像内に映り込んでいるお客さんが特定できない場合には,肖像権という権利自体が侵害されていませんので,何の問題もありません。

3 特定できる場合
次に「誰が写っているか」ということを特定できる場合ですが,これも,「その人を撮影対象と意識して撮影した場合」と「たまたま特定の個人が写り込んだ場合」とは異なります。

ご質問の小売店舗内の撮影について具体的に考えてみましょう。

たとえば,高級チョコレート店内の店舗を撮影する際に,商品そのもの,ディスプレイ,店舗の全体的な様子や店員さんの応対態度を撮影することになると思われます。
そのような場合,撮影対象はあくまでそれらの商品等であって,店舗内のお客さんではありません。その撮影の過程において当然店内のお客さんは映像内に映り込むでしょうが,それは「たまたま特定の個人が写り込んだ場合」でしょう。

これに対して,高級チョコレート店のイートインで,あまりに美味しそうにチョコレートを食べるお客さんがいて,そのお客さんを狙って撮影した場合には「その人を撮影対象として意識した撮影」となります。

このように「その人を撮影対象と意識して撮影した場合」と「たまたま特定の個人が写り込んだ場合」とを比べると,被写体に無断で撮影した場合,当然のことながら前者の場合の方が肖像権侵害とされる可能性が高くなります。

したがって,「その人を撮影対象と意識して撮影する場合」には,撮影対象者から明示的に承諾を頂いておくのが無難でしょうね。

これに対して,「たまたま特定の個人が写り込んだ場合」に,それらの人にもいちいち承諾を得ることは事実上不可能でしょう。
そのような場合は,取材に際してカメラやマイクを使用し,腕章を着用する等して取材中であることをわかりやすく明示して取材をする,ということが重要になります。
そのように取材中であることが明示されていれば,写りたくない人は店舗から出るでしょうし,それでも店舗内にいる人については,黙示で撮影を許可したことになると思います。

4 判例の紹介
ちなみに,肖像権侵害になるかどうかは,「撮影対象となっているかどうか」ということに加えて「そのような撮影や映像の使用を被写体が望んでいるかどうか」にも大きく影響されると思われます。
まあ,これは常識的に考えればわかることですよね。

この点について参考になるのが,Tokyo Street Style事件(東京地裁平成17年9月27日判決)です。

この事件は,ある女性が銀座界隈を歩いている様子を無断で撮影してサイトにアップした行為が肖像権侵害とされた事件です。

具体的には
・ 写真は、横断歩道上を歩く女性をほぼ右前方の位置から撮影したもので、女性の容貌を含む全身像が大写しされている。
・ その際に女性が着用していた衣服は、「DOLCEAND GABBANA」がパリコレクションに出展したもので、胸部には大きく赤い文字で「SEX」というデザインが施されている。
・ 撮影,掲載について女性の承諾無し。
・ 被告による写真アップ後しばらくして,2ちゃんねる上で当該写真が話題となり,下品な誹謗中傷が書き込まれた。さらに、一部の個人のウェブサイトでは、被告サイトからダウンロードされ複製された本件写真が掲載され,女性に対する下品な誹謗中傷が書き込まれた。
・ 女性は、友人から、写真が被告サイトに掲載されていること及び2ちゃんねる上での誹謗中傷がされていることを初めて知らされ、被告に対して抗議をしたところ、被告は、即座に本件サイトから本件写真を削除した。
という事案です。

裁判所は,
・ 本件写真は原告の全身像に焦点を絞り、その容貌もはっきり分かる形で大写しに撮影されたものであること
・ 原告の着用していた服の胸部には上記のような「SEX」の文字がデザインされていたこと
を根拠に

「一般人であれば、自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、これをウェブサイトに掲載されることを望まないものと認められる。」として肖像権侵害を認めました。

これが一般的なファッションだったり,掲載後の2ちゃんねるによる誹謗中傷がなければ肖像権侵害が認められたかどうかわかりません。
先ほどの店舗内撮影の例に戻ると,「高級チョコレート店」であればよいですが,「そのような店舗にいることが通常知られたくないような店舗」内の撮影には慎重を期した方が良いでしょうね。

今日はここまで。

<今日のまとめ>

  • 店舗内の取材については,個人の特定が出来なければ問題なし。
  • 個人の特定が出来る場合でも「たまたま写り込んだ場合」に備えて,取材であることを明示して取材・撮影していれば問題なし。
  • 「その人を撮影対象と意識して撮影する場合」には承諾を得る必要あり。
  • 取材方法や取材場所,撮影した写真の使用方法から「そのような撮影や映像の使用を被写体が望んでいるかどうか」も考慮する必要あり。

ブログで書けないネタも書くかもしれない?
メルマガ登録はこちらからどうぞ。

カテゴリー: 肖像権, 著作権と報道 タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です