参考資料をもとに番組制作すると著作権違反になる?(1)

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参考資料をもとに番組制作すると著作権違反になる?(1)著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

今日は,番組制作に際して参考資料を利用する場合,
どのような点に気をつけるべきかという点について
書きたいと思います。

問い
TV番組の放送作家をしています。このたび,
太平洋戦争に関するドキュメンタリー番組を制作する
のですが,多数の参考文献や参考映像,参考番組を
参照します。それら参考資料の中に書いてある個々の
エピソードは,番組の中で利用して良いのでしょうか。

答え
「著作権法違反なの?企画のパクリ」で書いたように,
参考文献に書いてあることを
「ネタ」として新たな番組を企画・制作することは
基本的に著作権法に違反しません。

それでは,もう1歩進めて,参考文献に書いてある
エピソード(歴史的な事実)を利用することは著作権法
に違反するのでしょうか。

1 事実と著作権
まず,歴史的事実そのもの(たとえば,「1467
年に応仁の乱が発生した」という事実)については
著作権は認められません。

これは当たり前ですね。

この点について著作権があるとなると,その事実について
著作者の許諾無くして誰も利用できなくなってしまいます。

ただ,事実そのものと,それを具体的に表現したもの
は異なります。

先ほどの「1467年に応仁の乱が発生した」という
歴史的事実について,wikipediaでは,応仁の乱の紹介
として以下のように冒頭で記述しています。

  • 「応仁の乱(おうにんのらん)は、室町時代の応仁元年(1467年)に発生し、文明9年(1477年)までの約10年間にわたって継続した内乱。8代将軍足利義政の継嗣争い等複数の要因によって発生し、室町幕府管領家の細川勝元と山名持豊(出家して山名宗全)らの有力守護大名が争い、九州など一部の地方を除く全国に拡大した。乱の影響で幕府や守護大名の衰退が加速化し、戦国時代に突入するきっかけとなった[1]。十数年に亘る戦乱によって、主要な戦場となった京都は灰燼と化し、ほぼ全域が壊滅的な被害を受けて荒廃した」。(「応仁の乱」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2013年5月31日 (金) 12:29 UTC、URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%9C%E4%BB%81%E3%81%AE%E4%B9%B1

これ自体は歴史的な事実ですので,この表現をそのまま
利用(たとえば,番組内でナレーションとして利用)
した場合に著作権法上の問題が生じることは考えにくいです。

しかし,同じwikipediaの記事では,その後に引き続いて
「1 背景」「2 経過」「3 拡大の要因」「4 守護大名・
豪族の動向」「5 地方の戦乱」「6 戦術の変化」
「7 戦乱の影響」「8 応仁の乱後の京都復興」という
順序で記述がなされています。

すべては引用しませんが,このような記述は,
一定の視点の下で,数多く存在する資料から事実を
取捨選択し,配列していったものですから,単なる
「事実」ではなく,著者独自の「表現」として著作
権法上保護されることになります。

ではこのような,著作権法上保護される「表現」と
保護されない「事実」の違いはどこにあるのでしょうか。

2 番組制作と参考資料
ある参考資料を基に番組を制作した場合に,
当該参考資料の著作権を侵害するか否かについては,
その参考資料の「表現上の本質的な特徴」を真似
しているかどうかによって判断されます。

番組を見た人が「あ,これは参考資料の『表現上
の本質的な特徴』と同じだな」と感じるかどうか,
ということですが,当然のことながら「表現上の
本質的な特徴」って何?,と言うことになるわけです。

この点について,最高裁は「表現上の本質的
な特徴とは、創作性のある表現上の本質的な特徴を
い(う)」としています。

もしあなたが上司に「最高裁が言っている
『表現上の本質的な特徴』ってどういう意味か
わかりやすく説明してくれ」と聞かれたとして,
こんな説明をしたら,間違いなく「馬鹿にしている
のか」と怒られるか,「おんなじこと言っているだけ
でしょ」と笑われるかするでしょうが,まあ,ちょっと
落ち着いてください,とその上司に伝えつつ,
こう答えましょう。

最高裁はそれに続いて,こうも言っています。

  1. 思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分
  2. 又は表現上の創作性がない部分

は「表現の本質的な特徴」ではないから,その部分を真似しても著作権侵害にならない(以上,「江差追分事件」(最高裁判所平成13年6月28日判決))。

つまり図示するとこんな感じです。

最高裁が示している「表現上の本質的な特徴」のイメージ

最高裁が示している「表現上の本質的な特徴」のイメージ

「表現の本質的特徴とは何か」を説明するのは極めて
難しいので「表現の本質的特徴でないものは何か」
を説明しているだけ,と言えばそのとおりですが,
実際の裁判においてはこの基準にしたがって
判断されています。

次回は,番組や舞台作品制作において参考資料を
利用した場合,実際の裁判例においてどのように
判断されたかについて見ていきましょう。

今日はここまで。

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