著作権と報道


著作権と報道著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

問い:
僕は今某テレビ局のバラエティー部門にいます。
タレントさんを間近に見られるなど,刺激的な毎日を
過ごしていますが,もどもと入社したのは報道番組の
制作に携わりたいとの思いからでした。
ですので,いつか報道部門に異動することを夢見ています。
ところで,報道番組の場合,バラエティ番組よりも著作物
を自由に利用できる範囲が広いと聞きました。本当でしょうか。

答え:
かなり無理矢理感のある「問い」ですね。

自分の力不足を感じます。

さて,報道記事や報道番組は国民の知る権利に
役立つものとして,著作権法上,特別な扱いがされて
います。

つまり,報道目的であれば,いわゆる「報道利用」
として,著作者の許諾無しに著作物を利用すること
ができるということです。

まず著作権法の該当条文を引用しておきます。

(時事の事件の報道のための利用)
第四十一条  写真、映画、放送その他の方法によつて
時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、
又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる
著作物は、報道の目的上正当な範囲内において
、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

よく問題となる要件は,
① 当該事件を構成(する著作物)
または
② 当該事件の過程において見られ,若しくは聞かれる著作物
といえるかどうか,という点です。

まず,「① 当該事件を構成(する著作物)」
とは,たとえば,美術館から絵画が盗まれた
という事件報道や展練会が開催されるという
報道の場合の当該絵画などが挙げられます。

この要件の関係が問題となった事件が2つあります。

1つは「ビデオ・山口組5代目継承式報道」事件
(大阪地裁平成5年3月23日判決)です。

この事件は,広域暴力団の山口組が「山口組五代目継承式」
の模様を自ら撮影したビデオの一部を,TV局がニュース番組
の中で無断で使用したケースです。

このニュース番組は,報道当日,大阪府警が暴力団
山口組の47人を逮捕し,系列の組事務所等28カ所
の捜索を行うなど一斉摘発を行ったものですから,
そこだけを捉えると「事件を構成した」と言えないよう
に思えます。

ここでいう「事件」とは一斉摘発のことを指し,
継承式の様子を撮影したビデオとは無関係だからです。

ただし,裁判所は,このニュース番組の構成やアナウ
ンサーの説明等から,このニュース番組は「山口組が、
五代目組長の威光を周知徹底させるために、本件継承式
の模様を撮影して本件ビデオを作成し、その複製物を
系列の団体に配付したこと」を報道したものであると
認定しました。

このように「ビデオを配布したこと」自体が「事件」
ということであれば,当然,継承式の様子を撮影した
ビデオは「事件を構成」しているということになりますね。

この判決からわかるように,「事件を構成」したと
言えるかどうかは,報道の趣旨や内容から「事件」
が何かを特定して判断する,ということになります。

この事件は報道目的利用が肯定された事例ですが,
逆に報道目的利用が否定された事例もあります。

「映画いちげんさん・週刊現代」事件(東京地裁
平成13年11月8日判決)です。

この事件は,当該映画の一部のシーン(女優Aの
ヌードシーン)が「A初ヌード」「『裸乳シーン』も
公開で大騒動!」というような各大見出しを付して,
週刊誌に無断で掲載された事件です。

週刊誌側は,当該映画のシーンは「事件を構成」
するものだと主張しましたが,裁判所はその主張を
認めませんでした。

裁判所は,

  • 「A初ヌード」「『裸乳シーン』も公開で大騒動!」という本件記事の大見出し
  • 本件活版記事にAの3つのヌードシーンを具体的に説明する文章があること
  • 本件写真が本件グラビアの最後の1ページのほぼ全体を使って掲載され「ラブシーンで全裸になるA。」などの記述が付されていること

などを重視し,本件記事が主として伝達している内容は,女優Aが
本件映画で初めてヌードになっているということに尽きるものとしています。

週刊誌側は,「当該映画が上映された『第2回京都映画祭』
が大盛況だったことや,映画祭の参加作品の中でも
当該映画が話題を独占したこと」が報道の趣旨だった,
と主張しましたが,裁判所には受けいられませんでした。

ちなみに裁判所は「本件記事は,読者の性的好奇心を
刺激して本誌の購買意欲をかきたてようとの意図で
記述されているもの」とまで言ってます。

扇情的な見出しや文章の内容,写真の扱いからすると
裁判所の判断が妥当ではないかと思います。

そして,「本件映画においてAがヌードになっている
ということ」は「時事の事件の報道」に該当しないこ
とは明らかとして報道目的利用を否定しました。

今回は,まったく毛色の違う事件を2件紹介しました。

報道目的利用として著作物を自由に利用できるか否か,については

  • 当然のことながら,報道目的利用と言っても無制限に認められるわけではないこと
  • それは報道の意図・趣旨から判断されるものであること
  • そして,報道の趣旨・意図は主観的に報道者側がどう思っていたか,ということではなく,実際に行われた報道内容などの客観的な要素から判断されること

がポイントではないかと思います。

今日はここまで。

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