「パクリ」って結局なんなのか。


最近バイラルメディアにおける「パクリ」の話題がネット上で沸騰しています。

「バイラルメディア運営者」がダメすぎて滅びてほしい

で,まず「パクリ」の定義が問題になるのですが,ここでは「他人の著作物を編集せずにそのままコピー(複製)すること」のうち違法なものを「パクリ」と呼ぶことにします。

とすると,著作権法違反の「パクリ」と,違法でないコピーとの境界線をはっきりさせておく必要があると思うわけです。

私がお世話になっているコンサルタントの永江さんが

「パクリの定義をはっきりさせようじゃないか」

というブログ記事を書かれているので,それに触発されて考えてみました。

■ 「パクリ」にあたらない2つのパターン
コピーが違法でないケース,つまり「パクリ」にあたらないケースは,おおざっぱにいうと2つしかありません。

1 著作権者の許諾を得ている場合
2 著作権法上の「引用」(著作権法32条1項)の要件を備えている場合

の2つです。

1は当たり前ですよね。
永江さんのブログにも書かれている,著者の同意を得てBLOGOSに転載される,というのは,当然違法な「パクリ」ではありません。

問題は2です。

「引用」というのは,著作権法上「著作権法違反ではない」と明記されている行為です。したがって,「引用」の要件さえ満たしていれば,著作権者の許諾を得なくとも,その記事をコピーできる,すなわち「パクリ」ではない,ということになります。

実は,この「引用」って著作権法上の争いがとても多い分野です。「パクリ」かどうかの境目の問題ですから,当然のことかもしれません。

■ 「引用」って何?
まず,著作権法上の「引用」と,世間一般で言われている「引用」とは少し意味が違います。
というか,世間では「どんな引用でも著作者の許諾がいるのではないか」とか,逆に「(参考文献)と記載すれば引用は自由では無いか」という誤解があるように思えます。

しかし,実際には著作権法上の「引用」の要件を満たせば,著作者の許諾を得なくても著作物の利用が出来ます。

では,著作権法上の「引用」に関する条文(32条1項)を見てみましょう。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

はい,すみません。

「公正な慣行」とか「正当な範囲」なんて抽象的すぎて訳がわからないですね。

これでは基準として使えない。

これまでの判例などを総合して考えると,公表されている著作物について,おおよそ以下の要件を満たしたものは「引用」としてセーフ,と言われています。

  1. 引用先と引用元の明瞭区分
  2. 引用元(自分の記事)がメインで,引用先がサブ(主従関係)
  3. 引用の必然性がある
  4. 改変しない
  5. 出典を明記する

▼ 引用先と引用元の明瞭区分
当たり前ですね。
どこまでが引用先で,どこからが引用元なのかはっきりしないとダメです。
方法としては,たとえばカッコでくくるとか,フォントを変えるとか,いろいろな方法がありますが,要は区別がつけばよいです。

永江さんのブログでは

 また、文章を転載する場合はネットのルールとして「blockquote」タグで挟む。そうすると検索エンジンは「これは引用だな」と見なしてインデックスしないのです。

とあります。

「「blockquote」タグで挟む」というのも当然明瞭区分の一つの方法ですが,それ以外の方法でも区別がつけば,著作権法上はOKです(ちょうど上記のような感じで)。

▼ 引用元(自分の記事)がメインで,引用先がサブ(主従関係)
たとえば,自社記事が全くなく,引用先の記事だけを掲載している場合はダメです。

裁判例で問題になったのは,「中田英寿事件」です。
これは,当時イタリアのプロサッカーリーグのセリエ Aに所属するチームで活躍している中田英寿選手について、その出生からワールドカップ・フランス大会の本大会出場直前までの半生をまとめた本が問題になった事件です。
この本の製作については,中田氏に対する取材や確認は一切行われていません。

引用が問題になったのは何かと言いますと,この本では中田氏の中学時代の詩を丸ごとコピーしていたのですよね。

で,中田氏側はこの行為は著作権侵害だ,と訴えたわけです(この裁判の争点はここだけではありませんが)。
出版社側は「これは「引用」だから侵害ではない」と反論したのですが,裁判所は「引用」の成立を認めませんでした。

というのは,この本では,中田氏の中学時代の詩を丸ごとコピーしたものの下に「中学の文集で中田が書いた詩。強い信念を感じさせる。」とコメントしたにすぎなかったのです。

これは,どう考えても引用先(中田氏の詩)がメインで,引用元(コメント)が従です。つまり主従関係を満たしませんよね。

最近話題のバイラルメディアでは,そもそも自分の記事が全くないものがほとんどですから,この「主従関係」を満たさないことは明らかです。

▼ 引用の必然性がある
あくまで「引用」という以上,引用先記事に対する賛意でも批判でもいいのですが,自分の言いたいことが何かなければいけない,ということです。

それが何もなく,単に「面白いネタ見つけました~」と言って記事を丸ごとコピーするのはダメです。

▼ 改変しない
引用に際しては,引用先の文章を改変してはいけません。正確に引用する必要があります。

▼ 出典を明記する
最後に,出典を明記することが必要です。
この点については,先ほどの引用に関する条文(32条1項)とは別の条文(48条1項が定めています。

次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一  第三十二条(以下略)

はい,ここでも「その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により」としか書いていませんね。

すみません(私が謝ることではないですが)。

この点については,解釈上は「利用する著作物に接着して,わかりやすく」表示することが必要とされています。

したがって,一部のバイラルメディアのように,記事の末尾に,ちぃさーく引用元URLを記載するという方法では,この出所明示義務を果たしているとは言えない,ということになります。

■ 具体例
で,永江さんが挙げている具体例について著作権法的に見てみます。

  • YouTubeからいいの探して持ってきて論評するだけ

これは画像と論評という点で明確に区別されていますし,論評行為も行っているので「引用」の要件を満たしOK。

  • 他のバイラルなどが紹介したネタをそのまま紹介

「そのまま」というところで,主従関係を満たしておらず,引用の必然性もないですからアウト。

  • 昔、ほかのメディアで紹介したものをそのまま掲載

これも主従関係を満たしておらず,引用の必然性もないですからアウト。

  • 著者の許可を得ず文章ごと持ってきて「blockquote」タグで挟まない

これは「明瞭区分性」を満たさないことが多いと思います。ただ,先ほど書いたように,何か他の方法で区別できればOKです。

  • 文章ごと持ってきて恣意的に内容を変える

これは悪質です。「明瞭区分」「主従関係」「改変しない」という引用のルール破りのフルコースです。

  • 上記で○でも「続きを見たければ」でFacebookのアプリを承認させて個人情報を抜き取り、そこにスパムを送りつける

よくわかっていない人を食いものにするという意味では「淘汰されるべき極悪人」という永江さんコメントには同意しますが,ま,これは著作権法とは直接関係ないということで。

■ まとめ
で,まとめですが,まず,人の記事をコピーする場合に,OKな場合が2つある,ということですね。

1 著作権者の許諾を得ている場合
2 著作権法上の「引用」(著作権法32条1項)の要件を備えている場合

の2つです。

そして「引用」と言えるためには

  1. 引用先と引用元の明瞭区分
  2. 引用元(自分の記事)がメインで,引用先がサブ(主従関係)
  3. 引用の必然性がある
  4. 改変しない
  5. 出典を明記する

が必要である,と。

バイラルメディアの場合,ほとんどが引用要件を満たしていない,つまり著作権法違反である,ということになるのではないかと思います。

(追記)
「外国語の記事を翻訳したうえで掲載するときはどうなるのか」という質問を頂きました。

本文で書いたように引用の要件として「改変しない」ということがあります。
「翻訳した上で引用する」ということは,「外国語の原文を翻案したものを引用する」ということになりますので,基本的には適法な引用とは言えない,ということになります。
これは,原文を同時に掲載していたとしても同様です。

したがって,外国語の記事を引用するときは外国語のまま引用するしかない,ということになります。

ま,本当にいい記事なら,ちゃんと著作者の許諾をとって翻訳したものを掲載すればいいと思いますけどね。

(追記の訂正)
追記部分について,「著作権法43条2号が引用(32条)について「翻訳」によって利用することができると規定してますよね。」という指摘を受けました。

確かにご指摘のとおりですね。大変失礼しました。
この条文で,「翻訳」によって引用するすることができる,ということになりますので,追記を訂正いたします。

条文引用しておきます。

(翻訳、翻案等による利用)
第四十三条  次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当該著作物を当該各号に掲げる規定に従つて利用することができる。

一  略

二  第三十一条第一項第一号若しくは第三項後段、第三十二条、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第三十九条第一項、第四十条第二項、第四十一条又は第四十二条 翻訳(以下略)

ご指摘,ありがとうございました。

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カラオケ映像をTV番組で利用することは著作権的に問題ないのか


著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

まずは本題よりも好評を頂いている料理写真です。

2014-05-25 18.53.17

ちょっとお祝い事があったので,ローストビーフを作りました。

お肉を冷蔵庫から早めに出して常温に戻し,フライパンで
周りを焼き付けてから,110度のオーブンで60分,
その後もゆっくり休ませる,これで,中に火が通ったような,
通っていないような絶妙のローストビーフが出来ます!

今日は,ブログ読者の方からご質問を頂いたので,若干
アレンジして紹介,回答いたします。

【質問】
民間の放送局で働いています。

情報番組で「ひとりカラオケ」の機械を紹介する目的で
映像と音楽を流している機械を大写しで紹介したり、
「カラオケを楽しむ」という演出で番組のリポーターが
普通のカラオケに行って歌う姿を紹介したり、
ぶらり旅の番組で、出演者が旅館でカラオケを楽しむ姿を
撮影することがあります。

毎回、お店や旅館のOKをいただいて、カラオケ画面を
写りこみ程度で撮影し、JASRACへの報告と、念のため
スーパー表示(楽曲名/アーティスト名)をしていますが,
著作権処理としてはこれでよろしいでしょうか。

【回答】
ご質問されている映像の撮影・放送は,「カラオケ楽曲
を,カラオケ用の映像と共に撮影・放送する」ということ
ですね。
とすると,原則として
・ カラオケ楽曲
・ カラオケ用の映像
の権利処理(権利者から使用についての許諾を貰うこと)
が必要です。

■ カラオケ楽曲
カラオケ楽曲の制作においてはCD音源は利用されて
いないと思われますので,原盤権の問題は生じない,とい
うことを前提とします。

カラオケ楽曲における詞及び曲については,放送局は放
送についてはJASRACとの間で包括契約を締結して使用料
を支払っていると思います。

ですので,JASRAC管理楽曲であれば,JASRACへの報告
だけでよいということになりますね。

ちなみに,JASRAC以外の管理団体が管理していたり,
管理団体により管理されていない楽曲については,
それらの管理団体や作曲者自身から許諾を貰わなければ
ならないことになりますので,注意してください。

■ カラオケ映像
カラオケ映像には,歌手本人が出演して本格的な演出
がされているものから,無名の役者さんがちょっと間違
った方向で熱演しているものまで,様々ですね。

カラオケ映像は,著作権法上の「映画の著作物」です
から,その著作権者は当該映像を制作した「映画製作者」
具体的には個々のカラオケ事業者(第一興商やジョイ
サウンドなど)です(参考URL

したがって,カラオケ映像を含んだ番組を制作,放送
する際には,原則として当該カラオケ事業者の許諾を得
る必要があります。

撮影対象のお店や旅館は著作権者ではありませんから,
それらのOKを頂いても残念ながら意味はありません。

ただ,以下に述べるように,結論としては,ご質問の
パターンでの撮影に際しては,許諾なしに利用すること
ができるのではないかと思います。

▼ 報道目的利用
まず,時事事件の報道のためにカラオケ映像を利用する
場合には,「時事の事件の報道のための利用」(法41条)
ということで利用が出来ることになります(「著作権と報道」)。

たとえば,カラオケの順番を巡って口論になり,殺人
事件が起こったというような場合において,当該事件現
場のカラオケ店でカラオケが流れている場面を撮影・放送
すること(しょうもない例で申し訳ありません)はOKと
いうことになります。

ご質問の中で「情報番組で「ひとりカラオケ」の機械を
紹介する目的で 映像と音楽を流している機械を大写しで紹介」
という場合(こんなのがあるんですね,知らなかったです。
今度こっそり行ってみます)は,時事事件の報道に該当すると
思われます。

したがって,この場合は権利者の許諾無しで利用できると思い
ますが,それ以外のパターンでは,この条文は使えないという
ことになります。

▼ 引用
では「引用」(法32条)として,権利者の許諾なしに
利用することが出来ないでしょうか。

「引用」として認められるためには
引用する側の著作物と引用される側の著作物において
・ 明瞭区別性
・ 主従関係
が必要とされています。

まず,明瞭区別性ですが,たとえば,論文の中で他の論
文を引用する場合は,引用する部分をカッコでくくるなど
して,両者が明瞭区別できるようにしなければなりません。

本件では,番組とカラオケ映像が明瞭に区別できるか,
ということですが,カラオケ映像はカラオケ機器のモニター
に映っていますので,簡単に区別できますね。

ですから,この要件はクリアしている,と。

主従関係ですが,引用している側が「主」,引用されて
いる側が「従」という関係になければなりません。

ご質問の例で言うと,
・ 情報番組で「ひとりカラオケ」の機械を紹介する目的で
映像と音楽を流している機械を大写しで紹介

→これは,「ひとりカラオケ」の専門店ができた背景,
どのような人が利用しているか,どのようなところにあるか
などの情報,ニュースが「主」であり,カラオケ映像をメイン
の内容としてなければ,主従関係はある,ということになるでしょう。

・ 「カラオケを楽しむ」という演出で番組のリポーターが
普通のカラオケに行って歌う姿を紹介

→これも,カラオケに行って歌うリポーターの姿が「主」
であり,カラオケ映像をメインの内容としてなければ,
主従関係はある,ということになりますね。

・ ぶらり旅の番組で、出演者が旅館でカラオケを楽しむ姿を
撮影

→これも,カラオケを楽しんでいる出演者の姿や,旅館
内の施設・雰囲気の紹介が主であればOK,ということに
なります。

以上検討したように,利用態様によりますが,ご質問
のケースはいずれも「引用」として,権利者の許諾なしに
利用できる可能性が高いといえるのではないでしょうか。

▼ 写り込み
以上述べたように,本件では,引用ないし報道目的利用
(ケースによっては)により権利者の許諾なしに利用できる
可能性が高いと思われますが,おまけとして,平成24年
の著作権法改正により創設された「写り込み」(法30条の2)
として,権利者の許諾なしに利用できないか,を検討してみます。

「写り込み」として許されるための要件については
「著作権法改正における写り込みのOKとNG」
に詳しく書いてあります。

私なりの解釈としては
① 「分離困難性」として,撮影意図との関係で,本来
の撮影対象としていたものか否か
② 「軽微性」として 「写り込み」の対象の映像等に
占める割合が物理的に小さいものかどうか
③ 「著作権者の利益を不当に害しない」として,著作
権者の著作物の利用市場とバッティングしたりあるいは将
来における著作物の潜在的販路を阻害するか
がかなり重視されるのではないかと思われます,とお伝
えしました。

これを前提とすると,
・ 情報番組で「ひとりカラオケ」の機械を紹介する目的で
映像と音楽を流している機械を大写しで紹介
というパターンは,カラオケ機器そのものが本来の撮影対
象でしょうから,「分離困難性」を満たすのは難しいのでは
ないかと思いますが,その他のパターンでは,上記3要件を
満たし,「写り込み」としてセーフ,ということになるので
はないかと思われます。

今日はここまで。

■ 今日のまとめ
・ カラオケ楽曲については,JASRAC管理楽曲であれば,
JASRACへの報告だけでよいが,JASRAC以外の管理団体が
管理していたり,管理団体により管理されていない楽曲
については,それらの管理団体や作曲者自身から許諾を
貰わなければならない。

・ カラオケ映像については,原則として権利者から
許諾を得る必要あり。ただし,以下に述べるパターンは
許諾無しで利用できる可能性が高い。
① 情報番組で「ひとりカラオケ」の機械を紹介する目的で
映像と音楽を流している機械を大写しで紹介
→報道目的利用,引用としてOK
② 「カラオケを楽しむ」という演出で番組のリポーターが
普通のカラオケに行って歌う姿を紹介
→引用,写り込みとしてOK
③ ぶらり旅の番組で、出演者が旅館でカラオケを楽しむ姿を
撮影
→引用,写り込みとしてOK

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著作権法改正 電子書籍の出版権を知る


著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

まずは本題よりも好評を頂いている料理写真です。

IMG_4694

お花見弁当です。
・ 菜の花のキッシュ
・ 唐揚げ2種(カレー味と甘酢漬け)
・ 豚の角煮
・ 肉団子クミン風味
・ エビのマスタードマヨネーズ和え
・ ブロッコリーのマリネ
・ 砂ズリのウースターソース炒め
・ レンコンのクリームチーズ和え
・ 新じゃがの韓国風煮物
・ 白菜の中華風甘酢漬け
・ ウナギのちらし寿司

・・・・・・いつもながらめったやたらに作ってしまいました。

さて,今日は,電子書籍に対応する「出版権」を設ける
著作権法改正案が今国会で成立する見通しとなったことから,
電子出版権(法案で定義されているわけでは無いですが,
この記事では便宜的にこの言葉を使います)についてご
紹介しようと思います。

もともとは,電子書籍についても横行する海賊版について
出版者にも自ら対処する権限を付与すべきだ,というところから
議論はスタートしています。

ただ,そこからスタートはしているのですが,当然のことながら,
特定のプレーヤーに権利を付与するということになれば,それ
により影響を受ける他のプレーヤーからも激しい異論・反論が
なされます。

電子出版権をめぐっては,出版者,著者,流通各社等々様々な
プレーヤー同士の激しいバトルがありました。

■ 電子出版権の創設までの経緯
「電子書籍に対応した出版権」に関する法改正の選択肢
としては,いくつかあったのですが,大きく分けて

A) 著作隣接権の創設
 出版社に電子書籍に関する著作隣接権を付与する

B) 電子書籍に対応した出版権の整備
 現行の出版権を拡充して電子出版にも及ぶようにする

の2つの方策(厳密には4つの方策があったのですが,
残り2つは省略)がありました。

AとBの最大の違いは「電子出版権が自動的に発生するのか
,契約により発生するのか」という点です。

Aの著作隣接権の場合は,出版者が出版物等原版(電子書
籍であれば電子書籍用のデータファイル)を完成させること
によって,自動的に権利が出版者に付与されることになります。

これに対して,Bの現行の出版権を拡充するという方向性
は,著作者と出版者の間での出版権設定契約によって発生
する出版権を電子書籍に拡大する,というものです。

自動的に発生する方が,当然出版者にとっては有利です
ので,出版者側はAの方法による電子出版権を主張していま
したが,結論としては,Bの「現行の出版権を拡充して電子
出版にも及ぶようにする」による法改正がなされることに
なったのです。

■ 電子書籍に対応した出版権の内容
全体像は文部科学省のWEBページ
を見ていただきたいのですが,これを私なりにわかりやすく
整理したのが下記の表です(クリックすると拡大します)。

まずは,出版権の主体と客体から。誰が,どのようなもの
について出版権を設定できるのか,という点です。

2014y04m30d_153052249

次に,出版権の内容と,再許諾の可否です。再許諾の点
については,現行の出版権では一律不可とされています
が,改正案では,著作者の同意を得れば再許諾可能とさ
れています。ここは重要な改正点です。

2014y04m30d_153210049

最後に,出版の義務と出版権の消滅請求です。出版権に
ついては,契約締結後一定期間内に出版する義務が出
版者には課されており,その義務に違反した場合は著作
者は,出版権の消滅請求をすることが出来ます。「解説」
欄には,注意すべき点について記載してありますので,
特に著者の方は要チェックです。

2014y04m28d_051420426

■ 契約書で「出版権を設定する」とだけ定めた場合どうなるのか

また,重要な問題として,改正法施行後に,単に「出版権
を設定する」とだけ契約をした場合に,そこに電子書籍に
関する出版権が含まれるのか,という問題があります。

出版者側は契約上の「出版権」に当然電子書籍を含むと
考えていたけども,著者側はそう考えていなかった場合が
典型的なパターンです。

これは,改正著作権法がどのように規定しているか,
というよりも、当該契約当事者双方がどのように契約を
理解していたか,という問題です。

契約締結までに双方がどのようなやり取りをしていた
のか,電子出版を前提とする印税設定がされているのか,
などによって結論が分かれます。

その点に関する紛争を避けるためには,特に著作者側
としては,「出版権」に電子書籍も含まれるのかどうか
を契約上明確にするように注意する必要があるでしょう。

そうしなければ,電子出版は別の出版者に委ねよう
思っていたとしても,出版契約を締結した出版者から
「話が違う」として抵抗にあうかもしれません。

■ 改正法はいつから施行されるのか

改正法の施行期日は,平成27年1月1日とされています。
そして,改正法は,施行日以降に出版権設定契約が締結された
もののみに適用されることになっています。

この点についても契約実務上は注意すべきでしょう。

今日はここまで。

<今日のまとめ>
・ 電子書籍の出版権に関する著作権法改正がなされる
見込み
・ 内容的には,自動的に発生する著作隣接権ではなく,
現行の出版権を拡充して電子出版にも及ぶようにすること
になった。
・ 著者側,出版者側は,これまで以上に契約内容を
明確化することが大事。

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